視覚障害者の生活実態調査報告書

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【ページ概要】
NPO法人 神奈川県視覚障害者協会が2013年度に実施した視覚障害者の生活実態調査の報告書です。
報告書目次
はじめに
視覚障害者生活実態調査結果からの提言
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視覚障害者の生活実態調査(2013年度実施)

実施主体:神奈川県視覚障害者福祉協会
調査期間:2013年8月〜10月
集計作業:神奈川工科大学小川研究室

視覚障害者の生活実態調査 目次

はじめに

近年、視覚障害者を取り巻く環境は大きく変化しています。 福祉分野においては、障害者総合支援法が2013年4月より施行されていますが、一人一人に合わせて適正に活用できているかを見極めていかなければなりません。 国連「障害者権利条約」の批准、障害者差別解消法の成立は、法的な文面にとどまることなく、実生活に反映される必要があります。

また、IT分野においても、視覚障害者の情報入手手段やコミュニケーション方法において飛躍的に進歩していることは確かです。 しかし、それらが視覚障害者にとって実際に活用できているか、 また、ITを使いこなすことから疎外されている状況(デジタルデバイド)に置かれていないかを把握する必要があります。

NPO法人神奈川県視覚障害者福祉協会では、視覚障害者の日常生活がどのように遂行されているか、 自立のための訓練などは十分に受けられているか、コミュニケーション手段は獲得されているか、 仕事では適切な対応がなされていたか、などについてアンケート調査により明らかにする試みを企画しました。

視覚障害当事者の立場から上記のことを明らかにするため、役員が会合を持ち、調査項目を一つ一つ検討し作成しました。 集計分析については、神奈川工科大学の小川研究室に依頼し、結果についての考察は共同で行いました。

本報告書が、それぞれの地域で自立した生活を行う上で検討すべき事項を若干でも明らかにできたものと思います。 各関係機関においても視覚障害者の実情をご理解いただき、それぞれの部面でご協力、ご支援を賜りたいと存じます。

本報告書のまとめ、提言が少しでも視覚障害者の生活向上に向けて寄与できれば幸いです。

2014年3月
特定非営利活動法人 神奈川県視覚障害者福祉協会
理事長 鈴木 孝幸

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視覚障害者生活実態調査結果からの提言

(1)早期の生活訓練に向けて

本調査では、歩行、日常生活、点字、パソコンなどの訓練・学習について、受障後かなり期間が経っている例が多数あったこと、 また、それら訓練・学習の紹介者の多くが、家族、友人、あるいは当事者団体であり、市区町村や病院からの紹介が少ないことがわかった。

受障後、円滑に自立した生活に移行できる支援体制を形成する上で、一人ひとりのニーズに基づき適切な社会資源に結び付けるための情報提供が求められる。 そのためには、サービス提供の行政的主体である市区町村、また、障害の診断、治療を行っている医療機関の果す役割が重要である。

(2)視覚障害者への適切な理解、啓発に向けて

白杖に対する抵抗感やネガティブなイメージがあったと回答している例が、多数を占めていた。 これらが視覚障害者自身の意識に反映されていることから、早期の社会参加を遅らせることになりがちである。 視覚障害の理解に向けた啓発活動は、さらに進めていく必要性がある。

(3)コミュニケーション手段としての情報機器の利活用に向けて

コミュニケーション手段として情報機器の活用は非常に大きな割合を占めていること、また高齢視覚障害者もそれらを活用していることが今回の調査でわかった。 しかし、一般のパソコンにスクリーン・リーダーを搭載すれば利用できる人たちばかりではなく、そこに到達できずにいる人たちへの支援が必要である。 また、音声ソフトがあっても、ホームページ側に問題がある場合も多い。 したがって、パソコンの学習の機会を増やすことはもとより、視覚障害者にとって使いやすいウェブ・アクセシビリティの実現が求められる。

(4)就労支援の充実に向けて

就労について回答した81人のうち、1割程度が差別を受けたと感じていたり、肩たたきを受けた経験があるとしていた。 また、職場の居づらさを感じていたのは6割を占めており、視覚障害のある状態で働くことの困難さを示していた。 一方、上司や同僚の配慮、気遣いがあったという回答も半数以上を占めていた。 これらは、職場での人間関係に基づくものが多く、職場での理解、周りの人たちの関わりの姿勢が大切であることが示唆されている。

また、障害者差別解消法にうたわれている「合理的配慮」が十分になされることが必要である。 合理的配慮とは、アンケート結果から次のように例示することができる。

・物理的配慮:視覚障害者用支援機器(拡大読書器、音声ソフト、照明機器など)の設備、点字ブロック敷設など

・人的配慮:外出時の同行、文字処理時の援助など

・その他の配慮:日照時間の短い季節での退勤時間の繰上げ、視覚利用の少ない業務内容の配慮、休職・傷病手当の手続き等の援助など

(5)公的サービスの活用に向けて

日常生活の状況をみると、大半が本人自身で処理しているか、家族など周辺の人の援助を受けていることがわかった。 ホームヘルパーの利用は、受障当時よりも現在のほうがやや多くなっているとは言え、けして大きな数字ではない。 自立して行っているとも言えるが、他方、家族や周りの人に頼んでいる割合が高いことも否めない。 障害者総合支援法に基づく公的サービスについては、ホームヘルプ、ガイドヘルプにとどまらず、 自立訓練や就労移行支援など諸種の支援項目を含め総合的に検討し、主体的な生活を実現するために有効に活用していくことが必要である。

(6)当事者団体の発展に向けて

生活に必要な訓練に関して当事者団体から情報を受けていたり、また、生活の中でやすらぎを覚える時間として当事者団体での交流を挙げている例が散見された。 当事者団体は、相談、情報提供、人と人のネットワーク作りなど、障害者の地域生活を支える重要な存在である。 今後とも、当事者側に立った相談、情報提供、交流の場づくりなど、ピアサポート(同じ仲間としての支援)に力を入れていくことが求められる。

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